逆行列の求め方(掃き出し法)
具体例
\(
A=
\begin{pmatrix}
3&6&1\\
2&2&0\\
1&0&0
\end{pmatrix}
\) に対し逆行列 \(A^{-1}\) を掃き出し法で求める。
$$\begin{aligned}
&\left(
\begin{array}{ccc|ccc}
3&6&1&1 \\
2&2&0&&1\\
1&0&0&&&1
\end{array}
\right)\\
\\
\rightarrow
&\left(
\begin{array}{ccc|ccc}
1&0&0&&&1\\
2&2&0&&1\\
3&6&1&1
\end{array}
\right)\\
\\
\rightarrow
&\left(
\begin{array}{ccc|ccc}
1&0&0&&&1\\
0&2&0&&1&-2\\
0&6&1&1&&-3
\end{array}
\right)\\
\\
\rightarrow
&\left(
\begin{array}{ccc|ccc}
1&0&0&&&1\\
0&2&0&&1&-2\\
0&0&1&1&-3&3
\end{array}
\right)\\
\\
\rightarrow
&\left(
\begin{array}{ccc|ccc}
1&0&0&&&1\\
0&1&0&&\frac{1}{2}&-1\\
0&0&1&1&-3&3
\end{array}
\right)\\
\end{aligned}$$
よって逆行列 \(A^{-1}\) は$$
A^{-1}=
\left(
\begin{array}{ccc}
&&1\\
&\frac{1}{2}&-1\\
1&-3&3
\end{array}
\right)
$$
この具体例のように行の基本変形を行うだけで、逆行列が求められます。やり方を正確に述べましょう。
逆行列の求め方(掃き出し法)
\(n\) 次行列 \(A\) の逆行列 \(A^{-1}\) は、もし存在すれば、次の手順で求められる。
- 行列 \(A\) と単位行列 \(E\) を横に並べた形のブロック行列 \((A|E)\) を考える。
- \((A|E)\) に行に関する基本変形を繰り返し、\((E|B)\) の形にする。
- この \(B\) が実は \(A\) の逆行列 \(A^{-1}\) になる。
基本変形による変形のことを「掃き出し法」と呼ぶことが多いので、このやり方も「掃き出し法」といいます。
掃き出し法で逆行列が求められる理由
正則な行列とは逆行列が存在するような行列のことでした。次のことが成り立ちます。
- 正則な行列 \(A\) はある正則行列 \(P\) を左からかけると単位行列 \(E\) になる。
- 単位行列 \(E\) に「1」の正則行列 \(P\) を左からかけると \(A^{-1}\) になる。
問題
上の事実を証明せよ。
「1」の証明
\(A\) は正則だから、ある行列 \(P\) が存在して \(PA=E\) となる。\(P\) にとっては \(A\) が逆行列となるから、\(P\) は正則である。
「2」の証明
「1」の正則行列 \(P\) は \(A\) の逆行列 \(P=A^{-1}\) だから、\(PE=P=A^{-1}\)
上の事実によって、ブロック行列 \((A|E)\) に \(P\) をかければ、$$P(A|E)=(PA|PE)=(E|A^{-1})$$だと分かります。
正則な行列 \(P\) は基本行列の積で表せましたから、上の事実を基本変形の言葉で表すと
- 正則な行列 \(A\) はある行基本変形たちを行えば、単位行列 \(E\) になる。
- 単位行列 \(E\) に「1」で行った行基本変形たちを行えば、 \(A^{-1}\) になる。
ということになります。これが掃き出し法で逆行列が求められる理由です。