線型代数学を初めて学ぶ

線型性とは

線型代数学で扱うものは[線型性]と[行列]です。まずは[線型性]のイメージをつかんでいきましょう。

変数x の動く範囲が実数であり、値f(x) も実数となる関数f実一変数関数といいます。実一変数関数の線型性は次の2式で定義されます。

実一変数関数の線型性

f(x+y)=f(x)+f(y)f(kx)=kf(x)(k)

具体例

f(x)=2xf(x)=3xf(x)=ax(a)

問題
  1. ここで具体例として挙げたものが線型性をもつことを確かめよ。
  2. 実一変数関数ではこの形(f(x)=ax(a))しかないことを証明せよ。

ベクトル変数vの各成分が実数で、値f(v)も各成分が実数のベクトルになる関数を実多変数ベクトル値関数といいます(しばしば頭文字の[実]は省略されます)。

実一変数関数のときと同じように、多変数ベクトル値関数の線型性は次で定義されます。

多変数ベクトル値関数の線型性

f(v+w)=f(v)+f(w)f(kv)=kf(v)(k)

具体例

F(xy)=(ax+bycx+dy)(a,b,c,d)G(xy)=(ax+bycx+dyex+fy)(a,b,c,d,e,f)

問題

ここで具体例として挙げた関数G が線型性を持つこと示せ。

例)F(xy)=(ax+bycx+dy)(a,b,c,d)の線型性を示す。

まず、v1=(x1y1), v2=(x2y2) とおく。
()=F(v1+v2)=F(x1+x2y1+y2)=(a(x1+x2)+b(y1+y2)c(x1+x2)+d(y1+y2))=(ax1+by1cx1+dy1)+(ax2+by2cx2+dy2)=F(v1)+F(v2)=()

次に、v=(xy)とおき、k を実数としてkv の行先を調べる。
()=F(kv)=F(kxky)=(a(kx)+b(ky)c(kx)+d(ky))=(k(ax+by)k(cx+dy))=kF(v)=()

行列の登場

n変数m次元ベクトル値関数は、もし線型性をもつならば、(m,n)型行列と一対一に対応づけることができます。(動画内では(m×n)行列としていますが、今後は(m,n)型行列といいます。)

線型関数と行列の対応

F(xy)=(ax+bycx+dy)A=(abcd)G(xy)=(ax+bycx+dyex+fy)B=(abcdef)

このように係数を取り出してきたものが対応する行列になります。非常に単純な対応だと分かると思います。

具体例

f(xyz)=(2x+3y+5z7x+11y+13z)(23571113)

実はこの係数になっている数たちが非常に重要なのです。このことは次の考察から分かります。

重要な考察

線型性をもつ2変数2次元ベクトル値関数F(10),(01)の行先だけが分かっているとする。それらをそれぞれ、(ac),(bd)とおく。すなわち、
F(10)=(ac),F(01)=(bd)
が成り立っているとする。このとき、F の線型性によって、
F(xy)=F(x(10)+y(01))=xF(10)+yF(01)=x(ac)+y(bd)=(ax+bycx+dy)
が成り立つ。したがって、F(xy)=(ax+bycx+dy)となり、(10),(01)だけでなく、全てのベクトル(xy)の行先が決まってしまう。

この考察を経れば、次の問題が分かるようになると思います。

問題

線型性をもつ3変数2次元ベクトル値関数fが次の性質をもつとする。
f(100)=(14),f(010)=(25),f(001)=(36)
f に対応する行列は何か?型とともに答えよ。

答. (2,3)型行列(123456)